革命・アメイロ玉葱派

2014.08.14.Thu.22:23
俺は料理をする。
料理歴は長い、小学校の実習から今年で20年目になる。

しかし、男というやつはどうも「肉」+「焼く」+「食う」=「料理」と誤解している節があるのではないかと常々思っている。
そこで20年目を迎えた今年、おれは一大決心、原点回帰としてカレーを作ることにした。

思えば、俺が最後にカレーを作ったのは、おそらくミスター味っ子の2巻あたりでカレー対決を見た時の事だ。
母親に車を飛ばさせ…店を練り歩いて買った軍鶏をヨーグルトとパインの汁に1日漬け込み(肉にこだわりを見せたくせに野菜には何も特異なこともせず)肉をのぞけば普通に作った普通のカレーに、ワサビ、からし、ウインナー用のつぶマスタード、そして俺が当時やたら食っていた(そのせいで凄惨ないじめを受けていた)にんにく(ただし、おろしチューブである。)を入れたものを作り上げた。

3日残った。

夏の日の事だ。

夏の3日は死を意味する。

当時、我が家の冷蔵庫に寸胴を入れるほどの器もないので、仕方ないと俺と母親は3食カレーと続けたものの、ついに捨てることとなった。

最後、無理やり食わせた弟が腹を下したのだ。

俺にはもうカレーを作る資格はない。



あれから19年。
主に肉を焼く以外にはパスタを茹でるかナッツを食ってるしか脳のない村上春樹みたいな生き様で今日を迎えたのだ。
(…おかしいな、なぜ俺は村上ではないのだろう?肉食ってるからだろうか、食わなければセックスが頻繁にできるのだろうか?まさか、バカバカしい、あいつの書くものはどうやっても非現実的、うすっぺら野郎め。)

だから俺は思った。
こんな生き様は捨ててやる。
「よし、カレーを作ろう。」

日々の仕事を淡々とこなしては淡々と上司に謝罪する毎日に、劇的な変化を与えるために!
俺は常々何かを変えようと必死であった。

その結果がカレーを作ることだった。

実を言えば、もうひとつプランがあったのだが…(エホバと創価学会じゃもうネタギレというか、ぶっちゃけ味気ないので…と)というのも革マル派の集会に参加しようかと思った。
…が、親が泣くだろうからやめた。
(…きっとどこぞのSNSで革マルのオフ会とかあると思うんだけどな…ちょっと行ってみたいかも。)

ちなみに右翼活動に参加した時は「家を出ろ」と言われた。

俺「デモに参加して来たんだけど、おれ公安の人に名前聞かれた(笑顔)」
母「あんたなんて知らない、もう出てけ(苦笑)」
父「ふん…(失笑)」

…大丈夫、昔の話だから、いまはもう働いているから。

さて。

カレーの作り方についてはみなさんもご承知かと思いますが。
わからない人のために、おさらいの意味も込めて書いておきましょう。

まず、にんじん、たまねぎ、じゃがいもを適当に切り。
圧力寸胴の中で炒めつづけ。
適度に連中が萎えてきたところで、まぁ…肉を投げてよこし。
また炒めつけ、フフ、連中…まぁ惨めな状態になったところで追い打ちをかけるかのごとく水をぶっかけってやり。
あとは…。…?…ん~鍋を、火にかけたままにする。
…あ~、たぶん中火じゃないですかね。
それから…まぁたぶん、グラグラしてきたらカレールーを入れて。
あとは、たしか、まぁカレーのルーが全部溶けるように延々とまぁ鍋をかき回しつづける。
もちろん米もとぐ。
…でまぁ、といで、まぁうち無洗米だからいいんだが、めもりピッタリに水を入れて、まぁあとは炊飯スイッチを入れりゃあ、まぁご飯炊けるわな。

さて、ここからが本題だ。

19年前の失敗から成長し、来年の1月には30になる前に俺は、おれのオリジナルカレーを作らなくてはならないとカレーの制作中に思ったわけだ。

つまり、ここまでの経緯とか話すべて嘘だ。
たしかに革マルは気になるし村上は嫌いだ
それとアレなカレーを作って以降カレーにアレンジをしたことはないが、
とにかく嘘だ!右翼もウソ!丁度カレー作ってたんだよ!

いいかミスター味っ子、おれはもう子供じゃねぇ。
お前のガキの話なんて読む気もしない!

中華一番、オーマイコンブ、クッキングパパにザ・シェフ、美味しんぼ、出て行け。
おれはすべての邪念を払いのけ、俺の19年で一番うまいと思ったカレーを思い浮かべた。

うん、どっかのレトルトの、アメイロ玉葱を売り文句にした、レトルトカレーが美味かった気がする。

あ~、いやぁ・・・まぁ、ね。それにしても「アメイロ玉葱」と書くと、なんとなく昭和レトロだ。
しかし昭和にありがちな逆読みをすると「葱玉ロイメア」
なんとなくV系か深夜にやってそうなSFアニメのタイトルに見える、アングラのバンドといった感じもするね。
倉橋ヨエコと東京事変を混ぜてえらいネオゴシックな恰好をしてそうな。

話を戻そう。
そう、アメイロ玉葱を作れば、たぶんカレーうまくなるんじゃねえか?という妥協としか思えない考えのもと、とりあえず成功することを再前提に俺は作ることとなった。

しかしそれじゃあまりにも妥当過ぎる。
ではどうするべきか?そこで俺は汚い大人よろしく一歩間違えて致命傷にはならないような安牌というものをカレーに使うことにした。
「安牌も点数、数打てば革命に繋がるのだ。」と、おれはヒットラーとレーニンの名言をググって思い、先月から信条にしている。

買ってきた安牌は3つだ。

①絶対に不味くならないはずの中華スープの素「味覇」
②どうせちょっとしかつかわない「バジルの葉」
③溶かせば大丈夫「赤味噌」 ④卵黄 ⑤ささみ

ささみはもちろん肉として使用する、それ以外にない。
これまで俺はささみをあまり食することがなかったのだが、先日実家の冷蔵庫を見たところささみと卵とネギしかなかったので、ささみをミンチにして、チューブのおろし生姜、キムチの素、めんつゆに半日漬けて卵とネギをぶちこんでチャーハンにしたところこれが異常に美味しかったので以来おれはささみの可能性について検討していこうと研究を続けている。

おれはまず当然のごとくささみをミンチにした。

ささみさんというアニメで声優をされた阿澄佳奈さんの事をふと思った。

ささみは今ズタズタになっている。阿澄さんは今年結婚されたという。

これはただのミンチだ、ふと思うなら元広島⇒元ロッテのネイサン・ミンチー投手を考えるべきだ。…阿澄さん、結婚おめでとう。

おれはミンチをビニール袋に入れると、なんとなく家にあったバジルソルトとオリーブオイルを入れて、ささみを揉みしだいた。

ふと、阿澄さんは巨乳で有名であったことを思い出した。…阿澄さん、結婚おめでとう。

さて、これが本当に大事な部分だが、アメイロ玉葱というやつを、皆さんは作ったことがあるでしょうか?おおよそ思い浮かべることができると思いますが玉葱をみじん切りにしたものを色が変わるまで炒め続けるというものです。
そう、それはゆるぎない事実の製造工程でありますが、なにせその色が変わるまでの時間というものはえらく長いのです。

「生きているとゆーことがーこんなにつーらいなんてー♪」
と脳内で歌いながら別で用意したフライパンに油をしいて炒め続けていたところ。

5分。

「アメイロタマネーギガー♪ゼンゼンデキネェジャンカ、だるい。」
てやんでぇバーローめ、こちとら千葉県船橋市民だが生まれは一応下町の江戸っ子!競走馬の心拍数数えるみたいにとっととやっちまいてぇんだ畜生め。
…いっそサラダ油をじゃんじゃん注いでフライドオニオンの揚げ屑みたいにすればいいかと考えましたが、俺は当初の「カレーに勝つ」という目的を思い出し…仕方なく「nanapi」というサイトにてレシピを見つけました。

http://nanapi.jp/2255/

ここまで来てサイトURLを置くなんて業者みたいな先導になってしまうので簡単に言いますと、なんと普通は20分もこれをやってなくてはいけないというのです。

無理である。

仕方ないので俺はこのサイトの教えに沿って、すでに火を通し、油も含んではいるがまだ玉葱らしい白さを保っているそいつを耐熱皿の上に置き、温めたのです。

30秒で不安になったのでやめました。

しかしその効果もあってか…あったのか、再び戻したフライパンで奇跡のように茶色になったのです。

もう俺の勝利は決まった。

30手前でようやく俺のカレーが作れる…そう確信しました。

というのも、あとは大した問題ではありません。
圧力鍋で先に作っておいたオーソドックスなカレーに玉葱をいれてかき混ぜ。ミンチになったささみを忘れていたのでレンジで火を通して入れてかき混ぜ。
そして、お湯で緩く溶かした味覇と赤味噌の混合物を風味をつける程度に居れてみて、ルーは完成。

カレールーをカレー皿に盛り、茶碗に盛ったご飯をそっと中心に置き、ご飯の上にくぼみを作り、そっと卵黄を乗せ。とりあえず刻んでみたバジルをまぶしてついに俺のカレーライスが完成した。

若干…刻んだバジルが、なんか刻んだシソの葉のように見えたがどうだっていい。

おれは記念として写真に貼ってツイッターにアップしようかと考えた。

やめておいた。

おれはあんなものをラインやらツイッターやらにアップしてグルメ気どりをする連中を心底軽蔑していた。

いいんだもう、そんなもの。

今は目の前にある、妥当でも勝ったことに違いないカレーを食って、俺は自分の殻を打ち破ろう。
おれはスプーンを手にとってひと匙目を食った。

これぞ俺の人生の味。

そのカレーの味ときたらもう渋くてかつ苦くてしょっぱい。



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