タンテイ・アンダードッグ 序章 ③「キーピン・ハイ、キーピン・ロウ」

2014.10.06.Mon.23:03
やばい、本気でやばい。
おれはビジネスカバンを重りでも持っているように重い手でなんとか開けて、タブレットを取り出して、ガリガリした。

大丈夫、ハイになるまでは30秒もかからない。

こいつを一錠、それで元気、いわゆるハイになり、10分で少しダウンして、手足が震えて、でも2時間すれば俺は満足な仕事ができる。
ハイ・アンド・ローでプラマイゼロ、またダウンになる時は、またそれを飲めばいい。
ガリガリと、そしてガツンときてちょっとしてダラダラで少ししてもうバリバリ。
ガツンといったあとにくるダラダラはまるで意味がわからないけど、ダウンのくせに何もかもが面白くもないのにゲラゲラとくる。
呂律も可笑しいし、ワードを打ってみても文章の、指の呂律が回ってない。
それには本気気味でゲラゲラしてしまう、周りは奇怪な目で見ているかな。
(こいつおかしいんじゃないか?)・・・でも誰も声をかけない、今はノルマが大事だ、俺でさえ「俺なんて知ったことか」ってね。
まったく馬鹿馬鹿しい、いいのかよそれで。
俺はバカだから笑ってしまう、ゲラゲラゲラゲラ。その笑いは声に出さないけど、噴き出しそうになる。
俺は医者の処方が怪しいと思っている、なんだかこれじゃジャンキーみたいだ。
医者に行くべきか?
そんなの面倒だ、カウンセリングみたいなことはしたくない、そして下手に薬を変えていつかのダウン地獄にはなりたくない。
周りの声が全て悪く聞こえて、子供のように泣いて、言ってることがぜんぜん通じなくて、電話もまともにうけられない。

「お疲れ様です、◯●支店の第二◯●部の◯●です」
「もう一度お願いします」
「◯●支店の◯●です」
「すいません、お電話、あの、聞き取れません」
「◯●さんいますか?」
「はい?」
「また電話します。・・・(だめだこいつ)」

『心の声』だけがハッキリ聞こえる。
あれよかマシ。

いまはハッキリしている。
ハイでローでプラマイゼロ。
ガリガリいってガツンでダラダラののちにバリバリ。
これでなんの文句もない。

もうこれを続けていくしかない。
あんなのはやっぱイヤだ。
でも、今って正常なのかな?
・・・うん、俺はまだきっとまともな方じゃないかなって思う。

ほら、だってさ、世にはびこるイカれたジャンキーよりも、たとえばトレインスポッティングよりも、バロウズのジャンキーよりも、脱法ハーブでイってる「お水ください」君よりも、運転して事故って小学生を殺しまくったクズよりも(大丈夫、おれは車の免許はないぜ)スマートフォンでゲームやってて人身事故起こしちゃうOLなんかよりも。
医者にちゃんと「はい」って処方されたのでハイってるんだ。

ちょっと俺の血液は汚れてて、誰かにくれてやれないだけなんだ。
なんかさみしいけど。

それ以外は俺はまだまともだ。

ゲラゲラゲラゲラ。

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